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友人の家に遊びに行ったとき、床を走り回るロボット掃除機を見ていて、ふと不思議に思ったことがあります。
「こいつ、どうやって壁があるって分かってるんだろう?」
ソファの下にもぐり、イスの脚をよけ、充電台にちゃんと帰っていく。目なんてどこにも付いていないのに。
フィジカルAIについて調べてきて、ロボットにとって一番大事なのは「見る」ことだと分かってきました。見えなければ、つかむことも、歩くことも、片付けることもできません。
そこで今回から、ロボットの体を人間の体にたとえて、ひとつずつ調べていくシリーズを始めます。1本目は「目」です。
ロボットの「目」、ざっくり言うと
- ロボットの目は1種類ではない。カメラ、距離を測るセンサー、レーザー(LiDAR)などを組み合わせている
- カメラは色や形が分かるが、距離は苦手。そこで、目を2つ使ったり、光を当てて距離を測ったりする
- ロボットにとって大事なのは「見える」ことより、見たものが何かを「分かる」こと。ここでAIが活躍する
- 会社によって考え方が違う。自動運転のWaymoはカメラ13台+LiDAR4台+レーダー6台、テスラはLiDARを使わない
- 最新のヒューマノイドは、手のひらにもカメラを付け始めている
ロボットの「目」は1種類じゃない

人間の目は2つですが、ロボットの目はもっといろいろです。調べてみると、大きく3つに分けられました。
| 目の種類 | 得意なこと | 苦手なこと | 身近な例 |
|---|---|---|---|
| カメラ | 色・形・文字が分かる | 距離を測るのが苦手。暗い場所や逆光に弱い | スマホのカメラ |
| 距離を測るカメラ(深度カメラ) | 近くの物までの距離が分かる | 遠くは苦手 | スマホの顔認証 |
| LiDAR(ライダー) | 周りの物までの距離を、広い範囲で正確に測れる | 色や文字は分からない。値段が高め | ロボット掃除機の上の丸い出っぱり |
ひとつで全部できる目はないので、多くのロボットはこれらを組み合わせて使っています。人間でいうと、目と耳と手ざわりを合わせて周りを把握しているのに近い感じです。
カメラ:色や形は分かるけど、距離が苦手
ロボットの目の基本は、やっぱりカメラです。スマホのカメラと同じように、色や形、文字まで見分けられます。
ただ、カメラには大きな弱点があります。写真は平面なので、物がどれくらい遠くにあるか分からないのです。
写真を見て「このコップ、手前にあるのかな、奥にあるのかな」と迷った経験はありませんか。ロボットも同じです。物をつかむには、「コップまであと何センチか」が分からないと困ります。
人間と同じく、目を2つ使う
そこで使われる方法のひとつが、カメラを2台並べることです。
人間は、右目と左目で見え方が少しずれます。指を顔の前に立てて、片目ずつ閉じてみると、指の位置が左右に動いて見えますよね。脳はこの「ずれ」から距離を計算しています。
ロボットも同じで、2台のカメラの映像のずれから距離を計算します。これをステレオカメラと呼びます。人の形をしたロボットの顔に、目が2つ付いていることが多いのは、見た目だけでなく、こういう理由もあるんですね。
光を当てて、距離を測る目
もうひとつの方法が、自分から光を出して、跳ね返ってくるまでの時間で距離を測るやり方です。
LiDAR(ライダー)

代表的なのがLiDARです。目に見えないレーザーの光を周りに当てて、物に当たって戻ってくるまでの時間を測ります。光はとても速いので、ものすごく短い時間を正確に測る必要がありますが、その分、距離はかなり正確に分かります。
冒頭のロボット掃除機の話に戻ると、上に丸い出っぱりが付いている機種は、多くの場合ここにLiDARが入っています。くるくる回りながら周りの距離を測り、部屋の地図を作っているわけです。
「目なんてどこにも付いていない」と思っていましたが、実はあの出っぱりが目でした。あんなに堂々と付いていたのに、まったく気づいていませんでした。
ちなみに、LiDARで部屋を測るロボット掃除機は、たとえばこんな製品です。
深度カメラ
同じように光を使って、近くの物までの距離を「画像」として撮れるのが深度カメラです。スマホの顔認証にも、似た仕組みが使われています。物をつかむロボットは、手元の距離を細かく知りたいので、こうしたカメラがよく使われます。
「見える」と「分かる」は別もの

調べていて一番おもしろかったのがここです。
カメラで撮った映像は、ロボットにとってはただの色の点の集まりです。そこに写っているのが「コップ」なのか「お皿」なのか、それが自分から何センチ先にあって、どう持てばいいのか。それを判断するのがAIの役割です。
たとえば、ボストン・ダイナミクスの人型ロボット「Atlas」は、こんなことをしているそうです。
- 2Dと3Dの映像を組み合わせて、物の種類・大きさ・位置を推定する
- カメラの映像と、頭の中にある「部品の3Dモデル」を見比べて、ずれを少しずつ直していく
- 棚が動かされていたら、それに気づいて、動き方の計画を変える
最後の「棚が動いたら気づく」は、地味ですがすごいことだと思います。昔のロボットは、決められた場所に決められた物がある前提で動いていたので、物の位置がずれると失敗していました。
②の記事で「フィジカルAIは見て・考えて・動くAI」と書きましたが、「見る」の中には、すでに「考える」が入っているんですね。
会社によって「目」の考え方が違う
調べていくと、どんな目を使うかは、会社によってかなり考え方が違うことが分かりました。
Waymo:たくさんの目を重ねる
⑤の記事で紹介した、ロボタクシーのWaymo。2024年に発表された第6世代のシステムは、こんな構成です。
- カメラ:13台
- LiDAR:4台
- レーダー:6台
- 周りの音を聞くマイクも搭載
これで、昼も夜も、いろいろな天気で、最大500メートル先まで見えるとしています。これでも前の世代より数を減らしたそうです。人を乗せて公道を走るので、ひとつの目が見えなくなっても、ほかの目で補えるようにしているわけです。
テスラ:LiDARは使わない
一方のテスラは、車でもLiDARを使わず、カメラ中心で考える会社として有名です。
人型ロボットのOptimusも、LiDARは付いていないとされています。おもしろいのは、2024年12月に公開された動画で、Optimusが視覚を使わずにでこぼこの地面でバランスを取って歩いていたことです。カメラの映像ではなく、体に付いたほかのセンサーだけを頼りに歩いていたそうです。
人間も、目をつぶってもしばらくは立っていられますよね。「見る」と「バランスを取る」は、別の感覚なのだと気づかされました。このあたりは、シリーズの「足腰」の回でくわしく調べてみます。
Figure:手のひらにも目を付ける
アメリカのFigure AIが2025年10月に発表した「Figure 03」は、手のひらにカメラを付けました。
物をつかもうとすると、自分の手で物が隠れてしまい、頭のカメラからは見えにくくなります。だったら手にも目を付けてしまおう、ということなのだと思います。さらに手には、わずか3グラムの力を感じとれる触覚センサーも入っているそうです。クリップ1個くらいの重さです。
「目」と「手」がつながってきたので、この話は次の「手」の回に続きます。
投資の目線でひとこと
ロボットの目を調べていて、日本の会社の名前がいくつも出てきました。
- カメラの心臓部であるイメージセンサーでは、ソニーが世界の売上の約半分を占めているそうです(調査会社Yole Groupによる2025年の数字)
- ⑪の記事で調べたロボット・AI関連のETF(BOTZ)では、工場で使う画像センサーなどを作るキーエンスが組入上位に入っていました
「AIのソフトはアメリカ、ロボットの体は日本が強くなるのでは」という僕の仮説の、「体」の側の一部、それも「目」の部分で、日本の会社がしっかり存在感を持っているのは、調べていてうれしい発見でした。
※特定の企業への投資を勧めるものではありません。
まとめ
- ロボットの目は、カメラ・深度カメラ・LiDARなどを組み合わせている
- カメラは色や形が分かるが距離が苦手。目を2つ使ったり、光を当てて距離を測ったりして補う
- 大事なのは「見える」より「分かる」こと。見たものが何かを判断するのはAIの仕事
- Waymoはたくさんの目を重ねる派、テスラはカメラ中心派。会社によって考え方が違う
- 最新のヒューマノイドは、手のひらにもカメラを付け始めている
ロボット掃除機の丸い出っぱりが目だったと知ってから、次に友人の家に行くのが少し楽しみです。今度はちゃんと、あいつと目を合わせてみようと思います。
次の記事では、目で見た物を実際につかむ「手」について調べてみます。卵をつかむのは、ロボットにとって実はかなり難しいそうです。

参考資料
- The Robot Report「Waymo’s 6th-gen Driver offers better performance at lower cost」(2024年8月)
- Not a Tesla App「Tesla’s Optimus Robot Learns to Walk Without Vision」(2024年12月)
- Notebookcheck「Figure 03 Humanoid robot debuts with wireless charging and ultra-sensitive tactile palms」(2025年10月)
- TechEBlog「Boston Dynamics Atlas 2.0 Humanoid Robot Perception」(2025年5月)
- Electronics World「Sony accounts for almost half of global CMOS image sensor revenues」(2026年8月)
本記事は、筆者が調べた内容を初心者目線でまとめたものです。特定の企業や銘柄への投資を勧めるものではありません。数字は各資料の公表時点のものです。


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