ロボットを遠くから動かす「アバターロボット」って何?初心者がホンダの展示を調べてみた

手袋をつけた人の手と、ねじをつまむ白いロボットの手が光の線でつながっている様子。「遠くからロボットを動かす「アバターロボット」 初心者がホンダの展示を調べてみた」の文字入り フィジカルAIを知る

もし、自分の「分身」になるロボットがいたら。

家にいながら、遠くの工場で機械を直したり、宇宙で作業したりできる。そんなSFのような話を、ホンダが本気で進めています。

2026年10月13日〜16日に千葉の幕張メッセで開かれた展示会「CEATEC 2026」で、ホンダが「Hondaアバターロボット」を披露しました。人がゴーグルと手袋をつけて操作すると、離れた場所にあるロボットの手が同じように動き、ねじを締めていたそうです。

ニュースを読んで、「遠隔操作のロボットって、昔からあるのでは?」と思いました。調べてみたら、今回のポイントは「人の操作を、AIがこっそり手伝う」ところにありました。

アバターロボットのポイント

  • 「アバターロボット」は、離れた場所にいる人が、自分の分身として動かすロボット
  • ホンダはCEATEC 2026で、人の手に近い多指ハンドで、バイクの部品のねじを締める実演をした
  • 遠隔操作には「距離感がつかみにくい」「さわった感じが伝わらない」という弱点がある
  • そこで、AIが物を見分けて、にぎる力や細かい動きを自動で調整する
  • 「全部自動」でも「全部人の操作」でもない、その中間という考え方がおもしろい
  • 発売の時期はまだ発表されていない。まずは手の部分が工場で先に使われる可能性がある

「アバターロボット」ってなに?

ゴーグルと手袋をつけた人と、離れた場所で同じポーズをとる白いロボットが電波の線でつながっているイラスト。アバターロボットのしくみを表した図

アバターは、もともと「分身」という意味です。ゲームやSNSで、自分の代わりになるキャラクターを「アバター」と呼びますよね。

アバターロボットは、そのロボット版です。

  • 操作する人は、ゴーグルと手袋をつける
  • ゴーグルには、ロボットのカメラが見ている景色が映る
  • 手袋をつけた手を動かすと、ロボットの手が同じように動く

つまり、自分はその場に行かずに、ロボットの体を借りて作業できるしくみです。

ホンダは、使いみちとして医療、設備のメンテナンス、災害の現場、宇宙での作業などを挙げています。人が行くのが大変な場所や、危ない場所で役立ちそうですね。

CEATECでは「ねじ締め」を実演

共同通信の記事によると、CEATECの会場では、バイクの部品を組み立てる作業を実演していました。

  1. 操作する人が、手袋をつけた指でねじをつまむ
  2. ロボットの手が、同じ動きでねじをつまむ
  3. ねじを穴にまっすぐ差しこみ、ドライバーで締める

文字にすると簡単そうですが、ねじは小さくて、向きも大事です。人間でも、手もとが見にくい場所だと苦戦しますよね。

遠隔操作には2つの弱点がある

遠隔操作のロボットは、昔からあります。では、何が難しいのでしょうか。

ロボスタの記事によると、遠隔操作には大きく2つの弱点があるそうです。

弱点どういうこと?
距離感がつかみにくいカメラの映像だけでは、物までの距離や奥行きが分かりにくい
さわった感じが伝わらないどれくらいの力でにぎっているか、操作する人の手には伝わりにくい

たとえば、目の前のコップをつかむとき、僕たちは「あと少し」「このくらいの力」を無意識に調整しています。でも、映像を見ながら遠くのロボットを動かすと、その「あと少し」がとても難しくなります。

そこでAIが手伝う

ロボットの手のまわりで、AIが物を見分けてにぎる力を調整している様子のイラスト。遠隔操作をAIが手伝うしくみを表した図

ホンダのアバターロボットは、この弱点をAIで補います。

  • ロボットのAIが、カメラでつかもうとしている物を見分ける
  • そのうえで、にぎる力や、手の位置・動きを自動で調整する
  • 操作する人は、細かい力の加減を気にしなくてよくなる

会場のデモでは、AIの手伝いをオンにすると、ねじ締めの作業がはっきりうまくいっていたそうです。ねじを持ち直したり、工具の向きを直したりといった細かい動きも、AIが助けていました。

人が「何をするか」を決めて、AIが「どうやるか」の細かいところを手伝う。人とAIの役割分担になっているわけです。

ちなみに、操作する人の手袋は、ふるえ(振動)でロボットの手の様子を伝えるしくみになっているそうです。さわった感じを少しでも人に返す工夫ですね。

0.2秒の「遅れ」も大きな壁

もうひとつの壁が、通信の遅れです。

ロボスタの記事では、日本とアメリカの間でも、約0.2秒の遅れがあると紹介されていました。

0.2秒と聞くと短く感じます。でも、ねじを締めているときに、自分の手の動きが0.2秒遅れてロボットに伝わると思うと、かなりやりにくそうです。

ホンダが目指している月での作業になると、もっと大変です。光の速さでも、地球から月までは片道で約1.3秒かかります。指示を出して、結果が見えるまでに、往復で2秒以上かかる計算です。

だからこそ、細かい動きはロボットのAIに任せることが大事になります。人の指示がざっくりでも、ロボット側でうまく合わせてくれれば、遅れがあっても作業を続けやすくなるからです。

ASIMOから受け継いだ「手」

白いロボットの前腕の中のモーターから、ワイヤーが指先までのびている様子。モーターを前腕に入れた多指ハンドを表した写真風の画像

ホンダといえば、二足歩行ロボット「ASIMO(アシモ)」を思い出す人も多いと思います。ASIMOが発表されたのは2000年です。

共同通信の記事では、今回のアバターロボットはASIMOの技術を受け継いでいると紹介されていました。

ホンダの公式サイトによると、アバターロボットの多指ハンドには、こんな特徴があります。

  • 関節は16か所
  • 指を動かすモーターは11個で、前腕(ひじから手首の間)に入っている
  • モーターの力は、ワイヤーで指に伝える
  • 指先に力を測るセンサー、手の表面にさわったことを感じるセンサーがついている
  • 指先の力は、ASIMOの5倍以上(ホンダの社内での測定)

モーターが手のひらではなく前腕にあるのは、人間と同じです。人間も、指を動かす筋肉の多くは前腕にあって、腱(すじ)で指を引っぱっています。手そのものを軽く、細かく動かせるようにする工夫なんですね。

「全部自動」と「全部人」の間

今回いちばんおもしろいと思ったのが、この考え方です。

ロボットの話を調べていると、「AIが全部自分で考えて動くロボット」がゴールのように思えてきます。でも、ホンダのアバターロボットは、あえてその手前を狙っています。

やり方判断するのは得意なこと気になること
全部人が操作人人の経験をそのまま使える細かい作業が難しい。遅れに弱い
人+AI(アバターロボット)人が決めて、AIが細かいところを手伝う人の判断とロボットの器用さを組み合わせられる操作する人は必要
全部AIで自動AI人がいなくても動けるAIの判断ミスが心配。まだ難しい作業が多い

③の記事では、家庭用ヒューマノイドが、できない作業を人が遠隔で手伝ってもらうしくみを紹介しました。⑦の記事では、フィジカルAIの課題としてAIが判断をまちがえるリスクを書きました。

アバターロボットは、判断は人がして、器用さはAIとロボットが受け持つので、その2つのいいところを取ろうとしているように見えます。

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いつ使えるようになる?

残念ながら、発売の時期や価格は発表されていません。

ただ、ロボスタの記事によると、ホンダは多指ハンドの部分だけを、先に工場の生産ラインで使うことも考えているそうです。まずは工場の設備のトラブル対応などから始めて、少しずつ使いみちを広げていく計画とのことでした。

アバターロボットが完成形になる前に、その「手」が先に働き始めるかもしれない。こういう段階的な進み方が、現実のロボット開発らしいなと思いました。

僕が思ったこと

調べる前は、「AIが進化すれば、ロボットは全部自分でやるようになる」と単純に考えていました。

でも、アバターロボットを知って、「人がロボットの体を借りる」という未来もあるんだと気づきました。人の経験や判断はそのままに、行けない場所に行ける。重い物も持てる。体が不自由でも作業ができる。

ロボットが人の仕事を奪う、という話はよく聞きます。でも、このロボットは人の手を遠くまで伸ばしてくれるロボットです。そう考えると、ちょっとワクワクしてきました。

まとめ

  • ホンダはCEATEC 2026で、人の分身として動く「Hondaアバターロボット」を実演した
  • ゴーグルと手袋で操作すると、ロボットの多指ハンドが同じように動き、ねじ締めもできた
  • 遠隔操作の弱点(距離感・さわった感じ・通信の遅れ)を、AIが力や動きを調整して補う
  • 手には16の関節と11のモーター。モーターは人間と同じく前腕にある
  • 「全部自動」と「全部人」の間をねらった、人とAIの役割分担のロボット
  • 発売時期は未定。手の部分が先に工場で使われるかもしれない

「ロボットに任せる」だけでなく、「ロボットの体を借りる」。フィジカルAIには、そんな使い方もあるようです。

参考資料

本記事は、筆者が調べた内容を初心者目線でまとめたものです。数字は各資料の公表時点のものです。特定の企業や銘柄への投資を勧めるものではありません。

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